『永遠と一日』テオ・アンゲロプロス監督 @ 早稲田松竹

今朝、雨の中会社に向かうバスに乗り込んだのは、
テオ・アンゲロプロス監督の「永遠と一日」の素晴らし過ぎるバス旅行のシーンを観てから数日後のことだった。

普段、自転車で通勤しているときは、246のコース取りに夢中で余計な事を考える暇はないのだけれど、
特にすることもなくバスに揺られていると、すぐに会社に行くのが憂鬱になってきて、
このまま遠くへ行ってしまいたいという気持ちが湧いてくる。
けれど、このバスは学芸大学と渋谷の循環バスで、ほとんど自宅と会社の循環バスみたいなものだった。

学生運動の闘士や若いカップルや楽団が次々と乗り降りして、センチメンタルな旅情を煽る「永遠と一日」のバスと、
自分が今乗っている自宅と会社を循環するバスのギャップを思うと、映画と現実を比べたって仕方がないと分かっていていも空しさが募る。

バスが渋谷に近づくに連れて車内が込み合ってくる。
のろのろと優先席から腰を上げて、降車扉付近に寄りかかってすぐのことだった。
雨の滴が張り付いたガラス越しに流れていく風景の中、
彼が佇む姿が焦点を結んだ瞬間、それは一瞬だけど映画のような瞬間だった。