『緑の光線』/エリック・ロメール@早稲田松竹


ミランダ・ジュライ編集の写真集をめくっていたら日没を捉えた場面に遭遇して、
昨晩、早稲田松竹で観た『緑の光線』/エリック・ロメールの事を思い出した。

物語もだいぶ進んで、日没のシーンに切り替わった時、「あ、これがラストシーンだな」というところまでは観ながら分かった。
太陽が水平線の彼方に沈む最後の瞬間、諸条件が整った状況下、それはとても珍しい事だが、緑の光線を発することがある。という話がこの映画のモチーフでもありタイトルでもある。その緑の光線が現れるかどうか、一歩手前の瞬間で暗転して、映画は終わるなと思った。

せっかくのバカンスだというのに、全然うまくいかなくて、落ち込むヒロインが最後に辿り着いた、運命の相手かもしれない男性とともに、果たして緑色の光線を見ることが出来たのかどうか、それは観客の想像力に委ねます。

そういう風にして終わるのだと思った。緑の光線が見れるかもしれないなんてこれっぽちも期待していなかった。そんなスペクタクルをフランス映画が、ましてやロメールが映画に持ち込んだりしないでしょうと心の底から信じて疑わなかった。

けれどあんな風にさりげなく、さらりと奇跡的な瞬間を見せつけられて、驚いたし、感動した。
おこがましい言い方だけど、俺よりもロメールの方がずっと映画の可能性を信じていると思って嬉しかった。
緑の光線がなくても成立したかもしれなけれど、緑の光線があることで想像を超える映画だったし、傑作だった。本当に。