9.14


よく寝た1日。
12時位に起きて、15時位に寝て、18時位に起きて、もうすぐまた寝る。

昨日、久しぶりにCDを購入した。
ここ最近タワレコに立ち寄るたびに試聴機で聴いていて、何度聴いても良かったZAZのアルバム。
「モンマルトルからのラブレター」という邦題はどうかと思うけど、中身はすごく良い。

多分普通の若い女と同じように自意識や恋愛やなんかのありふれた葛藤を抱えながら、
そういう個人的な迷いや葛藤とは全く別次元のところに、歌い手としての圧倒的な資質が彼女の中には在って、
パリのネオンサインや見栄、諦念、笑い、誘惑、駆け引き、酒、娼婦、金、そして人生を歌い切ってしまえる。
聴き手はただ目を瞑って彼女の歌声に耳を傾けるだけで良い。
そうすれば彼女の歌声が想像のパリまで導いてくれる。彼女の才能が彼女を本物のパリに導いたように。

そこはl'art de vieという言葉が生まれた街で、
広場に面したカフェではギャルソンが仏頂面で忙しそうに立ちまわっている。
隣の公園では学生のグループが芝生に直接座ってバゲット片手に談笑している。
もしかしてその中の1人は日本のアニメのTシャツを着ているかもしれない。
晴れた日のモンマルトルの丘では洗濯物が青い空にはためいているだろう。
地上では観光客がストリートの黒人達に土産物を買っていけと迫られている。

夜は夜で昼間の観光客がキャバレーの踊り子相手に愛嬌をふりまき、
幕間では時代遅れの手品師がお茶を濁している。
ビストロではワインを片手に人々が口角泡を飛ばして「ヨーロッパにおけるイスラムの台頭」について議論している。
子羊の煮込みに舌鼓を打ちながら。

そして深夜を回る頃、観光客はホテルに辿り着いてパリの1日の余韻に浸っている。
明日の朝になって財布をすられたことに気がついて大騒ぎするが、それはまだ先の話だ。
ビストロの酔っぱらいは上機嫌で立ち小便をかましている。
手品師は、ベッドで今夜も廃業を考えるが決心がつかない。今さら何が出来るのか。

すっかり暗くなった街の一角でシャンソニエから灯りが漏れている。
中では今まさにZAZがステージにあがり、第一声とともに観客を魅了したところだ。