『ばかもの』/絲山秋子 新潮社


『ばかもの』/絲山秋子。絲山さんの作品、初読。

出会って、別れて、再び(変わり果てた姿で)出会うヒデと額子の物語。
併行してヒデの前に、ヒデの前にだけ「想像上の人物」=「やんごとなき方」が不意に現れる。
「想像上の人物」について、ヒデは「俺固有の精神の問題」として特に追及しないし、
「想像上の人物」が物語を駆動することもない。本当に時々ヒデの前に現れて消えるだけ。
ヒデが「想像上の人物」に積極的にすがっている訳でもない。

1週間位前に読んで、ヒデと額子、良かったなと思って(愛おしいなと思って)、今再びパラパラとページをめくっていたら、
そういえば「想像上の人物」って出てきたなと思い出したくらい、この物語はヒデと額子の物語だと思う。
じゃあ「想像上の人物」って何なんだろう。自分(ヒデ)の事を常に見守ってくれる神的な存在でもないし。
他者と言えば他者なんだろうけど。物語を駆動しないという意味では、居ても居なくて同じような存在で、
実際俺も読み返すまでその存在を忘れていたわけです。ヒデの人物描写の一環として考えて良いのだろうか。
わざわざルビふって「想像上の人物」なんてもったいぶった書き方するからにはもっと深い意味もありそうだし。分からないなー。