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自転車の1ヶ月点検で黒川へ。
帰りにvegevegeでランチ。
デザートのトマトジュレが美味でした。

その足で、矢場町「イストリム」に行き、パーマをかけてもらう。

それも済んでしまうと、することもなくなって今池に戻る。
まだ17時位で、家に帰るのも勿体ない気がして、
自転車であてもなくさまよっていたら、普通のマンションの駐車場内に、お店らしきものが見えた。
好奇心をそそる立地である。ちょっと素通りできない。。


「ワインプラザマルマタ」。フランスワインの輸入販売のお店。
小さくてこだわりのありそうなお店に初めて足を踏み入れる時の、
あのお互いを見極めるような一瞬の緊迫感のあと、
「何かお探しですか?」の一声をきっかけに、話が弾み、色々教えてもらうことが出来た。

毎年1〜2ヶ月はフランス全土を飛び回って生産者と直接やりとりしているそう。
店内には取り扱っているワインの生産者を紹介する手作りのPOPが並んでおり生産者とのつながりの強さが伝わってくる。

流行りのビオワインについて、お店の方から聞いた話では、酸化防止剤が入っていなければよいわけではないそう。
酸化防止剤を使わない代わりに、生産過程で熱を入れたりすると、その時点で微生物が死んでしまい、
そんなものはワインとは言えない、とのこと。
堅苦しい話ばかりではなく、それぞれ特徴のあるラベルの解説をしてくれたり、
とにかくワインに対する敬意と、ワインを販売するプロとしての誇りと喜びが伝わってくる。
話を聞いているうちに、この人が選んだワインなら飲んでみたいという気になった。
味のことはわからないので、
生産者のプロフィールや、ラベルデザインなんかを見比べる(もちろん値段もチェック!)。
そして選んだ一本。「Avanti popolo」。
オーストリア出身の若手によるワイン。
彼は「革命」をテーマにしているそうで、
ラベルデザインも、革命劇『レ・ミゼラブル』の劇中歌でもある(?)「Temp des cerises」がモチーフだそう。
日光が強く濃厚な赤ワインで知られる南フランスでは珍しく、
自分好みのすっきりと透き通った赤ワインに挑戦しているそうだ。

ふう、やっと決まった。
と思ったら、2008年物と2009年物を持ってきてくれた。また選ばなきゃ〜。

「2008年物は彼が追及している味がよく出ている。私は大好きだけれど、カリニャン100%で癖も強いし、最初の一本には難しいかもしれない。天候にも恵まれ当たり年と言われた2009年物。カリニャン以外の品種も加えており、誰にでもお勧めできる一本。さあ、どうする?」
「もちろん2008年物で!」


確かに、よく透き通っている。
少しひなびたような香り。
口に含むと、ビールのようなキリリとした酸味に驚く。その後、口の中にブドウの香りがブワーっと広がる。
口に含んだ瞬間の酸味と、その後の濃厚な香りのギャップが楽しい。
口に広がる香り、そして後味は、確かにかなり癖がある。
のたうつような野性味が嬉しい。

羊肉など癖のある料理と合う、というアドバイスに従って、
牛肉の肩肉とガーリックライスをつくったのだが、相性ばっちりだった。
ワインだけだと1〜2杯で十分という感じだが、
こちらも癖の強い牛肉の脂とニンニクの香りとのギャップで、
ワインが爽やかに感じて、ぐいぐい飲めるし、ぐいぐい食が進む。
結局グラスで4杯飲む。
経験上、ワイン4杯飲んだら酩酊しそうなものだけれど、ブログを書いている今、そういう状態にはなっていない。
酔っぱらってはいるけれど、悪酔いはしていないのが分かる。
やっぱり、良い物は違うんだな。

全く別の話。食に関して印象深いことがあった。
数日前のこと、1人で遅めのお昼を食べる機会があった。
事務所から足を伸ばして、前から気になっていた定食屋を訪れた。
以前、本で名店と紹介されていたのを読んで以来、訪れるタイミングを伺っていた。

そのお店のご主人の首は左にかしげている。
腰が曲がったおばあちゃんのように、ご主人の首はかしいだまま固まっているのだ。
80歳位かな?ちょっとびっくりしたけれど、それはまあ最初だけである。

それよりも気になるのは匂いである。
お店の扉をくぐる前、お店の前に立った時から、匂っていた。
何か特定の匂いの発生源があるというよりは、
多分、長い年月を経て、お店自体が匂っている。
それはどちらかといえば不快な匂いである。
(※気になって、食べログの感想文を調べたら、匂いに対する言及はあまりなかった。俺が過敏なのかもしれない。)

そして、それにも関わらず、出てきたミソカツ丼がものすごく美味しいのである。
目の前のミソカツを夢中になって、はふはふしながら平らげる。
と、またあの匂いが鼻につく。
ご主人は気付いているのだろうか。
気付いていないんだろうな。
気付かずに「最近お客さんが減ったな」と訝しんでいる姿を想像すると切なくなる(実際に減っているのかは分からないが)。

お店を閉めるタイミングを逸しているのではないかという思いもあるし、
ご主人の料理人としての生き様に圧倒される思いもある。
何十年作り続けてきた美味いミソカツの作り方にせよ、(これは比較的最近だろうけど)嫌な匂いにせよ、
ここには色々なものが染みついている。
その染みに触れる時、ご主人の人生に思いを馳せずにはいられない。
色々考えさせられるお店である。