『さくらんぼの性は』ジャネット ウィンターソン (著), 岸本 佐知子 (翻訳) /白水社

ganemasuさんによる、Twitterで夏休みの課題図書指定します、的な企画に募集して、見事?指定された一冊。
ちなみに指定図書1冊目は『シカゴ育ち』。既読だったので改めて本書を指定してもらった。
以下、オススメしてくれたganemasuさんへの返信ツイート。少し補足しつつ。


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読了!感想書くの難しいな、というのが第一の感想。第二感想は中世ロンドンを生きた捨て子ジョーダンと育ての母である犬女が現世で(恋人として?)再び巡り合う部分を読んで、喉につっかえていた小骨が取れた様に感じたこと(中世の頃の二人の関係を捉えあぐねていたんです)。第三感想は冒険譚の主題を取りながら、(ホピ族のように?)時勢を区別しない形式や主体の唯一性を同定しないような語りの形式を採用することによって冒険譚における冒険性がずいぶん脱臼されており、同時にそれが男性性の脱臼の企図とも重なっている様に感じられたこと。というのは、冒険や男性性って時間軸に沿って展開・成熟するものという直線的なイメージがあるけれど、本書の場合時間軸が直線的なので、そういう風にはならないから。 第四感想は、多分これが一番重要で、時制やアイデンティティが不安定な物語にも、そうでない物語と変わらない美しさがあって、それは例えば海に太陽が登る時に世界が美しいと思うよな感覚で、そういう美しさを感じられる場面が随所にあったこと。

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下記サイトによると、本書のSexing the cherry (さくらんぼの性)というタイトルは、
さくらに対しても行われている「接木」の技術を指しているそう。
ざっくり意訳すると、環境に適応させるために異なる植物をつなぎ合わせる技術が転じて、生きるために様々な要素を必要とする「私」のメタファーになる、というような説明。
http://somanybooksblog.com/2009/01/31/sexing-the-cherry/

※ウィキによると、
ソメイヨシノは種子では増えない。各地にある樹はすべて人の手で接木(つぎき)などで増やしたものである。/すべてのソメイヨシノは元をたどればかなり限られた数の原木につながり、それらのクローンといえる。これはすべてのソメイヨシノが一斉に咲き一斉に花を散らす理由になっているが、特定の病気に掛かりやすく環境変化に弱い理由ともなっている。」、とのこと!!

おまけ。ganemasuさんが最初に『シカゴ育ち』を指定してくれた時の紹介文。かっこ良かったので。

孤独と愛とロックンロールが貧しさと駆けずりまわるよ!